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長文過ぎるので、症状と治療をページ分割しました。
肩関節の可動域制限と運動時痛を主訴とする疾患は数多く存在し、かつては病態が十分に把握できないまま肩関節周囲炎という診断の元、画一的に治療されることが多かったといわれます。
近年mri・超音波など画像診断の進歩により、その肩関節周囲炎という診断でくくられていた肩関節疾患群の病態が徐々に解明されてきました。
現在では、腱板断裂・上腕2頭筋長頭腱炎・石灰沈着性腱板炎・外傷後の2時性拘縮など原因と病変の部位が明らかな疾患を除外し、明らかな誘因なく40歳代以降に起こる肩関節の疼痛と運動制限を来す症候群を50肩(肩関節周囲炎)と呼称するようになりました。
病因には諸説ありますが、関節外軟部組織の退行性変化を基盤として最終的に関節拘縮を招くものと推測されています。関節包の拘縮が50肩の主な病態と考えられます。
50肩の病期は、疼痛と可動域制限の特徴によって以下の三つの病期に分けられます。
厳密な病期の区別は難しいですが、この見極めが治療方針を組み立てる上で重要なポイントとなります。
1. 疼痛性筋性痙縮期
症状が発現増悪し、夜間痛が強いのが特徴です。
運動制限もみられますが、疼痛に対する筋性防御的な要素が強く、関節拘縮は成立していないと考えられます。
安静時痛や夜間痛が出現し、日常生活では衣服の着脱・重量物の保持などが困難となり、夜間痛のため睡眠障害を来すこともあります。数週間持続します。
2. 筋性拘縮期
激しい痛みや安静時痛が軽減し、症状の主体が拘縮に変わる時期です。
50肩の拘縮とは、関節包やその周囲の軟部組織が非行あるいは癒着などを起こし、可動域制限が生じることです。
可動域の制限波特に外旋や外転動作で著しく、日常動作では結髪・結帯動作の障害が明らかとなります。
疼痛は、可動域の限界に近づいたときに生じるターミナルペインが中心となります。この状態は、数か月から数年持続します。
3. 回復期
拘縮が徐々に改善する時期であり、これに伴い疼痛や不快感が減少してくる時期です。
本疾患の大部分は、数か月から数年の間に自然回復すると考えられていますが、疼痛や可動域制限を残す症例も少なからず存在し、完全に治癒するとは言い切れません。
の3期に分けられます。したがって、患者がどの時期に来院するかによって自覚症状・他覚所見は異なります。
類似疾患すべてをベッドサイドの所見のみで鑑別するのは難しく、治療方針をたてる上では病変部位はどこか、病変の程度と病期はどれくらいか、断裂などの器質的障害はあるかというところを判別できればよいといわれます。
類似疾患は好発年齢層が一致しているものが多く、同じように肩関節の疼痛と可動域制限を来します。
1. 問診
疼痛の性質・部位・いつから症状を自覚しているかなどを確認します。
通常50肩は明らかな誘因なく発症し、疼痛も徐々に増悪することが多いといわれます。
2. 視診
腫脹・筋萎縮などを観察します。50肩は長期化すれば廃用性の筋萎縮を呈することもありますが、早期に萎縮を認めることはありません。
肩関節の診察は、静的な状態より動的な状態を観察しないと解らないことが多く、たとえば拘縮があれば挙上時の早期から肩胛骨が上腕骨と一緒に動き出し、腱板断裂ではその逆に肩胛骨の動きが減少するなど肩峰上腕リズムの異常が認められます。
3. 触診
筋萎縮や腫脹・熱感・圧痛を調べます。
圧痛は広範囲に多数見られることも多いため、診断的意義を求めるのは難しいですが、障害部位の推測を可能にするとともに治療ポイントにもなります。常に健側と患側との比較を行います。
4. 理学所見
実際の臨床では、単に「なになにテスト陽性」とするよりは、どの方向へどの程度動かすと疼痛が誘発されるかということの方が有用な情報となります。
関節可動域は痛みのために制限されているのか、あるいは拘縮が形成されていることによるものかを区別することが大切です。
これには、自動運動時と他動運動時の差や、検者の手に伝わる抵抗感などから判断します。
痛みで制限されている場合は、他動的に上げていくと自動運動時よりも上がってきます。
反対に、拘縮によるものは他動的に動かしてもそれほど変化せず、強い抵抗感があります。
病期を鑑別する上では、拘縮の有無が一つの目安となります。
a. 疼痛
圧痛は初期には肩前方にあることが多いが、拘縮が進み筋性拘縮期に移行するにつれて次第に肩後方に運動時痛・圧痛があることが多いとも言われます。
b. 可動域制限
拘縮が顕在化していない疼痛性筋性痙縮期の初期を除くすべての病期において、肩屈曲・外転・内外旋のすべての方向に可動域制限を認めることが特徴です。
これに対して、腱板断裂・肩峰下滑液包炎などでは、屈曲・外転の制限が明らかでも下垂位での内外旋制限が軽度であることが多いといわれます。
また、各可動域の最終域で運動がかちっと止まる感じと痛みを訴えます。
c. 筋萎縮・皮膚の色調
50肩の症状が尖炎かしてくると、肩周囲の廃用性筋萎縮が出現します。
さらに症状が進行すると、肩のみならず患側上肢全体の疼痛・知覚異常など多彩な症状が出現し、片手症候群と呼称される病態を呈します。
特徴的な所見として、手指の色調は赤色調を呈し、触診では暖かく、手のしびれ感・知覚過敏や手指の拘縮を認めます。
一端完成した片手症候群の治療は非常に困難で、初診時には肩のみならず上肢全体をよく観察しておくことが簡要です。
d. mri
50肩には特徴的なmri所見はありませんが、50肩と診断するための必要な除外診断を行うためにmriは有用です。
特に50肩と腱板断裂を鑑別する検査として、mriのはたす役割は大きいそうです。
<キーワード>
廃用性萎縮 : 不動性萎縮とも呼び、生体の器官が使われないために痩せ、その機能が低下すること。ほとんどの器官は、『使わなければ、使えなくなってしまう』性質を持っています。
腱板 : 肩関節に安定性をもたらす筋肉および腱の複合体で、最も損傷を受けやすい部位は、肩峰(けんぽう)の下にある肩峰下腔(けんぽうかくう)と呼ばれる狭い空間を通過しなければならない棘上筋腱です。
合目的運動 : 一定の目的にかなったまとまった動作
肩関節屈曲(前方挙上) : 気をつけの状態から前習え方向の動き。
肩関節伸展 : 気をつけの状態から屈曲と正反対の方向への動き。
肩関節外転 : 気をつけの状態から真横方向へ挙げていく動き。
肩関節内転 : 外転の反対側方向への動き。
肩関節外旋 : 回旋とは体の一部を、その長軸を軸として回す運動のことで、凱旋とは肩の前面が外側に向かう動き。
肩関節内旋 : 肩の前面が内側(胸の方向)に向かう動き。
参考文献 : 医道の日本2008年7月号
医道の日本2007年12月号
医道の日本1997年5月号