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便通異常

 便秘は、堅便ないし兎糞便であることや、排便困難を伴うかまたは週2回以下の排便のものです。
下痢は、軟便ないし水溶便が急激に排出される状態で、回数は問いません。
診断は主に便秘は排便回数により、下痢は便の性状によってなされます。したがって、便秘と下痢は対立する概念ではなく、下痢便でありかつ便秘することもあります。

便秘の分類

 便秘は、急性便秘と慢性便秘に分けられます。
急性便秘は、腸閉塞などの急性疾患に伴う便秘や、環境の変化に伴う一過性単純性便秘などがあります。
慢性便秘は、種々の機能性便秘・気質性便秘・薬剤性便秘などがあります。鍼灸治療が適応となるのは、機能性便秘です。
器質性便秘は、大腸疾患・そのほかの腹空内臓機疾患や全身疾患に伴うものであり、薬剤性便秘は投与中の薬剤による便秘です。

 機能性便秘は、弛緩性便秘・痙攣性便秘・直腸性便秘に分類されます。
弛緩性便秘は、食生活や運動不足などにより大腸の蠕動運動が低下して便の排出力が不足するために生じ、便秘ではもっとも頻度が高いとされます。便意および腹痛は少なく、便の通過遅延のため水分が過吸収され、堅く太い便となります。残便感は少ないといわれます。
痙攣性便秘は、ストレスや精神的原因により副交感神経が過緊張状態になり、腸蠕動が促進し排便困難となるために起こり、過敏性腸症候群の便秘型です。便意は強いが排出困難で、間欠的な腹痛や腹部膨満感があり、兎糞状の細い便となります。残便感が強いといわれます。また、心理的要因に左右されやすく、時に下痢と交代制を示します。
直腸性便秘は、弛緩性便秘に類似しており、多忙であることや痔などのために便意を我慢したことや浣腸を常用したことにより排便反射(直腸〜結腸反射)が鈍麻し、便が直腸に達しても蠕動運動が始まらないことから生じます。堅く太い便となります。

排便を促す反射および排便のメカニズム

 排便を促す反射には、以下のものが知られています。
1. 起立〜結腸反射
朝目覚めて起きあがると、大腸が動きだす。
2. 胃〜結腸反射
胃に食べ物が入ると、大腸が動きだす。これは朝に1番強く起こるため、朝食後に便意を催す場合が多いといわれます。
3. 直腸〜結腸反射
便貯留によって直腸壁が進展刺激されると、大腸の蠕動運動が活発になる。

 直腸内に糞便が送られると、直腸内圧の上昇が起こります。直腸内圧が30〜50mmhgに達すると、直腸壁に分布している骨盤神経の求心路を介して排便の下位中枢である仙髄s3 s4に刺激が伝達されます。
刺激は脊髄を上行し、大脳に達して便意を感じさせる一方で骨盤神経の遠心路を介して直腸運動を亢進させ外肛門括約筋を弛緩し、排便を促します。これを排便反射と呼びます。

鍼灸の作用機序

 基本的には身体をリラックスさせる副交感神経が腸壁を収縮させ、興奮型の交感神経が緩める働きを担っています。
体幹部への鍼灸刺激は、脊髄反射(体制内臓反射)を介した交感神経の興奮による消化管運動の抑制を引き起こすため、胃蠕動・腸蠕動行進による痛みに対して有効となります。
 手足への刺鍼は、腸管運動を行進させることが知られています。蠕動運動の低下による弛緩性便秘に対しては、手足への鍼刺激が蠕動運動を促進して便秘を改善することが期待できます。
便秘には、足の三里(上巨虚) 手の合谷 腹部の天枢(腹結あるいは大巨) 腰部の大腸兪(便通穴)等のつぼが有名です。
また鍼灸専門誌には、脊髄損傷による排便困難に仙骨部のつぼに強刺激を与えて著効した症例が紹介されています。

 便通異常とは直接関係はありませんが、嘔吐・嘔気に、手の内関 足の三里のつぼの使用の有効性が支持されています。
また、鍼灸刺激による胃酸分泌抑制効果が知られています。


参考文献 : 医道の日本2004年2&10月号


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