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頚肩こりの治療がすなわち緊張型頭痛を治すことになります


一時性頭痛

 国際頭痛分類第2版が出版され、大きくは一時性頭痛と二時性頭痛に分けられています。
一時性頭痛は、頭痛自体が疾患です。いわゆる善玉頭痛(機能性頭痛)です。
二時性頭痛は、くも膜下出血・脳腫瘍のように原因があって起こる頭痛です。

一時性頭痛には
1. 片頭痛
 偏頭痛の項参照。

2. 緊張型頭痛
 筋緊張型頭痛では、頭蓋骨の周囲をとりまく筋群の持続的な緊張が出現し、通常肩こりを伴い、ひどくなると上背部の筋肉痛(左右の肩胛骨の間)や吐き気・目まいを伴います。
緊張型頭痛は、頭痛の原因の半分を占めます。どちらかというと中高年女性に多めで、遺伝性はありません。
偏頭痛が急に起こるのに対して、緊張型頭痛は、いつとは無しに始まりだらだらと続きます。後頭部から首筋にかけての重圧感があり、はちまきをしているような・帽子をかぶっているようなと表現されます。肩こりや目の疲れ・体のだるさやふわふわしてめまいを伴っていることが多いといわれます。

 心理的なストレス・身体的過労・上肢の過度の使用・目 耳 鼻 あご 歯の病気などで生じます。
入れ歯の不調があると、頭の周りの筋肉も緊張して頭痛が起こります。最近、顎関節症は頭痛の原因として特に注目されています。
飲酒はよい影響、運動・入浴で改善します。

3. 群発頭痛およびほかの三叉神経・自律神経系の頭痛
 群発頭痛は、片頭痛よりもっと片側性です。中年男性に多く、男性の方が女性の5倍とされ、珍しい部類の頭痛で、全体の0.5%です。
群発頭痛の患者は、片目の奥のえぐられるような激しい痛みで、痛いときは片頭痛と違ってのたうち回ったり、壁に頭を打ち付けたり、じっとしていられない。
痛い側の目から涙が出たり、鼻水・鼻づまりがあったり、まぶたが下がってくるというような特徴的な症状があります。
それが1〜二時間程度続き、1,2ヶ月間ほど毎日発作が起こりますが、それを過ぎるとけろっとしています。そこを聞き出せば、群発頭痛だと判断がつきます。

 三叉神経痛も顔面に突然の激痛が現れる点はよく似ていますが、痛みの持続時間が神経痛は数10秒であるのに対して、群発頭痛は一時間程度と長い点が異なります。
三叉神経痛は神経の痛みですが、群発頭痛は血管の炎症による痛みです。
群発期は、飲酒により発作が頻発します。よってこの期間は、飲酒は避けます。

4. その他の一時性頭痛
 アイスクリーム頭痛などがあります。

脳も関与することがある緊張型頭痛

 特に慢性の緊張型頭痛は、中枢における疼痛を感じるシステムに問題が起きているのではないかと考えられています。
緊張型頭痛は筋肉の凝りだという単純なものではなくて、脳あるいは三叉神経・筋が痛みに敏感になっている状態です。
だれでもある程度の筋肉の緊張はあります。それを不快に感じるのが、緊張型頭痛です。噛みしめや副鼻腔炎、精神的緊張などいろいろな要素が加わることが多いです。

 アームちぇぁてすとというのがあります。
患者に目を閉じてもらい、前に出した手を検者が支えます。そして力を抜いてもらいます。そして検者が支えた手をパッと外します。
するとリラックスしている人は手がおりますが、緊張している人は手がおりません。
緊張型頭痛の人で、精神的な緊張が筋肉の緊張にどの程度反映しているかを観る客観的な手法です。

 緊張型頭痛で圧痛のあるものとないものでは、圧痛のある方が筋肉の要素が強いと思われます。圧痛がない人は、心理的な背景や精神的な問題が多いようです。
緊張型頭痛は、本来は慢性反復性に経過するものが多いとされます。頻回になればなるほど頭痛に対する閾値が下がる → 中枢の脳の過敏性が増し、痛みを感じやすくなります。日数が多い人は、中枢性の要素がかなり影響しています。

心の病にも関わる頭痛

 鬱の時に頭が重いのは、緊張型頭痛です。どちらが先かは判りませんが、緊張型頭痛で慢性化している人は、1般に鬱的な傾向が強いといわれます。
鬱傾向の人はどちらかといえば筋緊張は少ないのに対して、たとえばパソコンをよく使う人は、猫背で筋肉はがりがりです。このような人には、鍼は有効です。
しかし、鬱状態の人にも鍼治療をすると、楽になる人は少なくありません。

いつもと違う痛み、突然の痛みに気をつける

 危険な頭痛とは、2字性頭痛(何らかの基礎疾患や原因となる病態から生じる頭痛)のうち、緊急を要する頭痛あるいは見のがすと重篤な結果をもたらすような頭痛です。
二時性頭痛は、脳の器質的異常がその原因です。二時性頭痛の3代疾患は、くも膜下出血・脳腫瘍・慢性硬膜下血腫といわれます。
問題は、歩いて来院するくも膜下出血の人です。頭痛の程度は軽くても「いつもと違う突然の頭痛」が起こっています。
「何時何分に頭痛が起こった」と患者さんは言われるそうです。
数日後、項部硬直が出てくるときに肩こりがあって来院され、そのときは頭が重いぐらいなのですが、それがくも膜下出血だったということもありえます。
頭痛がいつからどのように始まったのかを聞くのがポイントです。「突然起こった」といわれたら、軽くても医療機関への受診をすすめます。

        <危険な頭痛を疑うエピソード>
1. 今までに経験したことがない(これまでで最悪)。
2. 突然症状が出現し、すぐにピークにたっする(突然ということは、何かが破れたか・詰まったか・ねじれたかを示唆する)。
3. 最近1ヶ月の間にどんどんひどくなる。
4. 明け方に頭痛で目が覚める(頭蓋内圧が高くなる明け方に頭痛で目が覚めるといった症状は、脳腫瘍を強く疑います)。
5. 神経精神症状(麻痺・視覚異常・失認・人格の変化など)を伴う。
6. 高熱を伴う。
7. 力んだり頭を振ったりすると、悪化する。
8. 高齢者で初発。

首と肩のこりは、片頭痛や群発頭痛にも伴う

 一時性頭痛の鑑別のポイントは、片頭痛は頭の中が痛みに敏感になっていて、緊張型頭痛は頭の外が痛みに敏感になっています。
片頭痛は、頭を動かす動作で頭痛がひどくなるのが特徴です。
ストレッチなどの運動で楽になるのが緊張型頭痛で、辛くなるもしくはやる気もしないのが片頭痛です。
お辞儀をするたびにずきんずきんというのは、片頭痛です。このような動作を「お辞儀試験」といっています。
それ以外では、吐き気・嘔吐があるかないか、光や音に過敏になっているかどうかもポイントです。

 日常臨床でみる頭痛は、偏頭痛と緊張型頭痛の混ざった混合型頭痛タイプが6〜7割をしめます。
緊張型頭痛の病態や発症機序は未だ不明です。

薬が頭痛の原因になることもある

 片頭痛の基本的な薬物治療は、急性期の治療と予防療法があります。
発作回数が少なければ急性期の治療で、片頭痛の特異的な治療薬を発作のできるだけ早い時期に飲んでうまくいくそうです。
しかし、1週間に2日はそういう状態が続くとなると頻度が多いので、予防療法が必要になってきます。
ただ、予防薬はどれも速効性がなく、痛み止めの市販薬を月10日以上飲む人は、薬のために頭痛が酷くなって薬物乱用頭痛になっている可能性があるそうです。
カフェイン含有鎮痛剤が原因になることが多く、薬物乱用頭痛のメカニズムは、中枢性の脳が過敏になってくるということだと考えるお医者さんもおられます。

緊張型頭痛に対して鍼灸は貢献できる

 特に慢性緊張型頭痛の患者には、薬に頼ることなく頭痛体操などの運動療法あるいは鍼灸などで治療した方がよいと思われます。
片頭痛の特異的な治療薬でもすっきり治らないという場合は、脳の不調感・緊張型頭痛が残っているからだと考えられます。
このように、発作日数が多い人や特異的治療薬でもすっきりよくならないような人、また妊娠の可能性を考えなければならない女性患者には、鍼治療はよいと思われます。

 片頭痛の患者で発作予防を目的に鍼治療を行うと、頭痛日数の減少と首や肩・咀嚼筋の圧痛や緊張の軽減が関係しているといわれます。
頚神経のc2,c3に当たる脊髄が頭痛の発信基地となります。片頭痛に先立ってこの部分の凝りあるいは痛覚過敏がまず起こります。片頭痛の前は、まず肩凝りが必発とされています。
次の段階で血管が感作(過敏化 : 感受性の亢進)されると、片頭痛になります。首・肩凝りを治療することは、片頭痛の予防につながる可能性は十分にありえます。

緊張型頭痛に対する鍼治療

 緊張型頭痛の発症機序は、頭部の筋群よりも後頚部や肩甲上部・肩甲間部の筋群の過緊張が重要な役割を果たしています。そこで鍼治療は、こうした筋群の過緊張を緩和し、循環動態を正常化することを目的に行います。
目の奥が痛い・見えにくくなったなどの愁訴もよく訴えられ、これは大後頭三叉神経症候群と呼ばれます。

 後頚部のツボでは、僧帽筋や頭半棘筋部の天柱・風池・下風池および
胸鎖乳突筋や頭板状筋の停止部の完骨などから強い圧痛を選択して直刺を行い
上天柱・上風池に下方に向けた斜刺を行い、20分間の留置鍼をします。
ここは、僧帽筋・頭板状筋や頭半棘筋・頚半棘筋などの間を小後頭神経や大後頭神経が走行しており、大後頭神経には三叉神経との間に吻合があり、目の奥の痛みなどの眼症状にも有効です。

 肩甲上部では、僧帽筋上部線維上の肩井、肩甲間部では、各筋が交差する膏肓
また、側頚部の板状筋部や肩甲挙筋部
肩甲骨内上角部(肩甲挙筋停止部)を治療部位として選択します。
患者の体力や体調、症状の程度により刺激量を調整します。

おわりに

 頭痛に対する鍼治療効果は、自覚症状が70%以上改善するのに要する期間や回数は、3週間に5回程度治療を行い再評価することが望ましいと考えられます。
緊張型頭痛の発症機序は、身体的・精神的ストレスにより頭蓋筋の持続的筋収縮が起こり、それが長びくと阻血性筋収縮となり、発痛物質が発生し、疼痛が起こります。
また、疼痛は交感神経活動を高め、疼痛閾値が低下し、筋肉の持続的収縮となります。
さらに頭が痛いこと自体もストレスとなり、1連の悪循環が完成します。

 また、頭痛が頻繁に繰り返されると脳過敏状態となり、頭痛は慢性化するといわれています。
これらのことから緊張型頭痛の鍼治療は、1連の悪循環を断ち切ることで症状の改善に寄与するものと考えられます。
また、反復性慢性緊張型頭痛は、薬物乱用頭痛に移行することが懸念されており、非薬物療法である鍼治療が貢献できるものと思われます。

参考文献 : 医道の日本2000年11月号
       医道の日本2009年6月号
       医道の日本2011年2月号

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