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膝関節痛(変形性膝関節症を中心に)


主な膝関節痛の原因疾患

1. 外傷性関節軟部組織損傷
 膝のスポーツ外傷により起こることが多く、単独で損傷する場合と複合して損傷する場合とがあります。
a. 半月盤損傷
 方向転換時や、ジャンプの着地に片足に体重がかかって捻ったとき等に発症します。
b. 靭帯損傷
内側側副靭帯損傷・前十字靭帯損傷の順に発生頻度が高いといわれます。
2. 関節症
a. 変形性膝関節症
b. 神経病性関節症
3. 炎症性疾患
a. 関節リウマチ(ra)
b. 偽痛風

4. スポーツ障害
 スポーツ障害には「スポーツによる外傷」と、繰り返しの使い過ぎ症候群である「スポーツ障害」があります。下記二つは、スポーツ障害の代表です。
a. ランナー膝
 長距離ランナーに代表される膝の屈伸をくり返すことの多いアスリートに発症するオーバーユース症候群で、その疾患には膝蓋軟骨軟化症・腸脛靭帯炎・鵞足炎があります。
 腸脛靭帯炎 → 大腿外側に存在する腸脛靭帯が、大腿骨外側上顆の骨性隆起との間で繰り返し摩擦することで炎症を生じて発症します。
そのため、膝の外側の緊張が高くなりやすいo脚の選手に発症しやすいとされます。
 鵞足炎 → 鵞足は、膝の屈筋である縫工筋・薄筋・半腱様筋腱が膝の頸骨内側面に鵞鳥の足のように広がって付着していることからこの名称がついています。
鵞足部の膝屈伸痛とともに、同部位に熱感と圧痛を認めます。内側の緊張が高くなりやすいx脚の選手に発症しやすいとされます。

b. ジャンパー膝
 ジャンプ動作では、大体4頭筋・膝蓋骨・膝蓋腱(脛骨粗面に付着)が重要な膝伸展機構として働きます。
ジャンパー膝は、同部位にジャンプの繰り返しによる過度の付加が加わって生じるもので、バレーボールなどでジャンプするスポーツ選手に多発する使い過ぎ症候群の典型例です。
 膝蓋腱炎 → 膝蓋腱炎は典型的なジャンパー膝障害であり、運動時の膝関節前面に痛みを生じ、膝蓋腱付着部に圧痛を認めます。
大体4頭筋が膝蓋骨上縁に付着している部位でもいわゆる付着部炎を生じることもあり、これもジャンパー膝の一つです。
 オスグッド・シュラッター病 → 成長期のジャンパー膝ともいえるもので、ジャンプなどの繰り返しで膝蓋腱が脛骨粗面を過度に牽引することで発症します。
身長の伸び率が高まる12〜13歳頃に発症のピークがあります。

5. 骨軟部腫瘍
6. その他の疾患

変形性膝関節症

 45〜80歳・中高年の膝関節痛のもっとも多い原因です。
変形性膝関節症はその原因によって1時性と2時性に分けられます。いずれも背景として加齢的変化はありますが、1次性関節症は発祥原因の不明な発祥に対する誇称です。
2次性関節症は、明らかな原因を背景として続発発祥するものを指します。スポーツ選手は、前十字靭帯や半月板などの膝安定機構を損傷することが多く、安定性を失った膝関節の関節軟骨は早期に変性が進み、若年でも変形性膝関節症を発症します。
性別ではほぼ4対1の割合で女性の方が多く発祥します。また、肥満体型の人に多く観られるのも特徴の一つです。
病気の発症は、関節軟骨にかかる負担が持続的に続くことによって起こります。
 患者の80%近くは1時勢の変形性膝関節症です。1時勢の変形性膝関節症では、その主因と考えられている膝関節の軟骨の変化は40歳代から始まり、50歳代を過ぎると膝痛を中心とした症状の発祥が起こってきます。

変形性膝関節症の症状

 症状の第1は膝関節の痛みです。初期には関節のこわばり程度ですが、初発症状として動作を開始するときの疼痛が特徴です。
本症の膝痛の特徴は、運動時痛です。ごく初期には痛みの部位ははっきりせず、膝周囲の筋肉のこわばり・膝窩部や膝前面部の漠然とした不快感等を訴えることが多いようです。
一般に病態の進行に伴って痛みの部位は次第にハッキリしてきます。階段の登り下り・とくに下りるときに関節の痛みを感じたりもします。
疼痛はいったん出現してもそのまま持続するわけではなく、無症状となることが少なくなく、軽快したり増悪したりをくり返して次第に悪化し、進行すると安静時にも疼痛を生じるようになります。

 関節痛の次に発祥するのが可動域制限であり、これは関節周囲組織の硬縮によるもので、進行すれば関節の変形による可動域制限が加わります。次第に関節周囲筋の萎縮が認められるようになります。
膝を完全に伸ばせない・完全に曲げられない等の運動制限が発症します。
 進行期には、内反変形(o脚)あるいは外反変形(x脚)が観られますが、体重は主に膝の内側部にかかるため内側の関節軟骨は早く損傷し、圧倒的に内反変形(o脚)を来すことの方が多いことになります。
 関節の炎症が強いときは、関節内に水がたまる関節内水腫が観られることがあります。

変形性膝関節症の鍼灸治療

 膝痛で鍼灸の治療対照としてもっとも多い患者は変形性膝関節症です。高齢者で膝に痛みがあり、正座ができない・膝が伸びない・等の膝関節の症状を訴える患者は、まず変形性膝関節症を疑ってよいと思われます。
変形性膝関節症の治療の基本は、根気よく保存療法を行い、本症発症の要因を可及的に除去することです。肥満体型の人には、体重の減量をアドバイスします。
圧痛は膝関節内反変形の場合は、内側関節裂隙・膝蓋骨内側縁・鵞足部などに多く現れます。

1. 障害部位の把握、治療部委の選択
a. 膝蓋骨の圧迫・膝の屈伸・長時間の座位等で生じる膝蓋骨前面や周辺の疼痛は、大腿骨と膝蓋骨からなる膝蓋大腿関節の障害であることが多いと言われます。
 内反変形では、膝蓋骨内側縁、外反変形では膝蓋骨外側縁等を触診し、圧痛点を探します。
b. 立ち上がりや階段を下りる場合等で生じる膝の内側・外側の疼痛。
 膝を曲げた状態の体重付加で特に痛みが強まる場合は、大腿骨と脛骨(下腿内側の太い骨)からなる大体脛骨関節の障害であることが多いと言われます。
内反変形では内側関節裂隙、外反変形では外側関節裂隙などを触診し、圧痛点を探します。

c. 疼痛部位を明確に示せる局所の疼痛。
 患者が疼痛部位を明確に示せる場合は、比較的膝関節の表面側の構造物(関節包・筋肉・腱の付着部など)の痛みであることが考えられるので、その部位に圧痛点を探します。
d. 膝の深部の疼痛や、場所を明確に示せない疼痛。
 膝の奥が痛い・痛みが全体にある等患者が疼痛部位を明確に示せない場合は、関節の内側の構造物(前後十字靭帯や半月板・関節軟骨など)の障害である場合もあります。

2. 鍼治療
a. 関節疼痛部に熱感や腫脹が強い場合。
 腫脹を囲むように10分程度の浅刺の留置鍼や散鍼をします。
b. 関節疼痛部に熱感がない場合。
 圧痛点に浅く刺鍼し、留置鍼や雀啄術(頸肩腕痛参照)を行います。
c. 膝周囲筋の圧痛や筋緊張。
 鍼治療は、膝関節の痛みを取り除くことがまず第1の目的となります。大腿部内側をはじめ鵞足を中心に、大腿部や下腿後面の筋肉など膝関節の周囲に留置鍼し、遠赤外線で加温します。

 また、膝関節の炎症を抑え関節内の水腫を抑制することを目的に膝蓋骨上方の大腿前面部に治療点を求めますが、これは灸治療の方が効果的であるといわれる治療者もおられます。
 膝関節痛を起こすと大腿部の前面の大腿4頭筋を中心とした筋肉の衰えが著明になり、膝関節を支持する働きが低下を来します。この筋肉の衰えはますます膝関節に負担をかけ、痛みを助長させることになります。
痛みの監理として鍼治療を、膝関節の支持力を高めるためには運動療法をそれぞれ併用する方法は、変形性膝関節症に対する保存療法として有効な治療法です。
しかし、誤った時期や運動療法・やりすぎはかえって悪化させるので自己流は避けてください。
鍼治療は、膝関節そのものの痛みの治療を行いますが、運動療法によって発症する筋肉の疲労や筋肉痛などの症状をも併せて治療することができます。

      <キーワード>
脛骨粗面 : 脛骨体の前縁の上端はS状に曲がる縁で結節状に隆起しており、上半部に膝蓋靱帯が付きます。
o脚とx脚 : o脚(内反膝)とは、両膝のお皿(膝蓋骨)を正面に向けて立ったとき、両くるぶしをつけると両膝が開いてしまう状態。o脚の基準は、両膝の間に指が3本入るかどうかです。
また、同じ姿勢で立ち、両膝をつけたときに、両足のくるぶしが離れてしまう状態をx脚(外反膝)といいます。成人でo脚やx脚がある場合は、変形性膝関節症や腰痛の原因になることがあります。

参考文献 : 医道の日本1999年9月号
       医道の日本2010年7月号

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