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上肢に痛みやしびれをうったえる代表的な疾患として、頚部脊椎症(頚椎症)があります。
すなわち、頚椎の加齢的変化がベースとなって中枢または末梢神経の症状を呈してくる疾患といえます。
本症は40〜60歳代の男性に多く、動的ストレスが最も多くかかるc5〜c6間に好発します。
発症は、重量物の運搬や、頚椎伸展位での長時間の作業・重労働などが誘因となることがありますが、ほとんどのばあい誘因なく発症します。
本症は臨床症状から四つに大別できますが、これらは単独ではなく合併して発症する場合が少なくありません。
鍼灸臨床で遭遇する機会が多いのは下記の三つです。そのうち、鍼治療は関連痛型と神経根症状型には適応と考えられます。しかし、脊髄症状を示す場合は、一般的に鍼灸治療は不適応とされています。
1. 関連痛型(局所症状型)
原因 : 脊椎〜洞神経・後枝内即枝の刺激
症状 : 頚・肩・肩甲間部の疼痛・こり感・圧迫感。
頚椎の運動制限とそれに伴う頚肩背部への放散痛など。
関連痛型は、理学的検査で肩から肩甲間部へ疼痛が出現します。手指への放散痛は見られず、上肢の知覚・筋力・深部反射にも異常は見られません。
椎間関節部の圧痛は、病変部の存在を示唆していることが多いので、念入りに触診する必要があります。
2. 神経根症状型
原因 : 神経根の圧迫
症状 : 頚腕痛、障害神経レベルに沿った上肢の痺れや脱力感。
神経根症状型は、理学的検査で主訴である上肢への放散痛が出現します。
3. 脊髄症型
原因 : 脊髄の刺激・圧迫
症状 : 上下肢の痺れ・知覚障害
手指の巧緻性運動障害(箸 ボタン ネクタイなどの操作が困難)
痙性麻痺性歩行障害、膀胱直腸障害など。
脊髄症状型では、理学的検査は陰性で、病的反射は陽性となります。
痛みよりも上肢や下肢のしびれ・脱力感・歩行障害などが主で、神経根症状型のような激しい痛みは通常訴えません。
痙縮性歩行障害など脊髄の持続的な刺激・圧迫が起こっている可能性がある症例は、早期に専門医への受診が必要です。
4. バレー(バレリュー)症状型
原因 : 椎骨動脈・椎骨動脈神経叢などの刺激・圧迫。
症状 : 頚椎の動きによって生じる眩暈・頭痛・視力障害・耳鳴り・嘔吐
大まかに、上部障害症状(第4〜第6頚神経)としては、母指側の橈骨神経領域の知覚障害。
下部障害症状(第8頚神経〜第1胸神経)としては、小指側の尺骨神経領域の知覚障害とされています。
一般的に疼痛のみを訴えるものは比較的治療効果が高い傾向にあるのに対して、筋力低下や筋萎縮を示すものは治療に抵抗することが多いように思われます。
鍼治療は、病変局所の筋の過緊張を緩和し、循環障害を改善することで症状の軽快に到るものと推察されています。
骨の変形の程度が強くなると鍼の治療にも抵抗してくるものと思われますので、頚椎症に対する鍼治療は、病態によって適応と限界があります。
治療方法は、いわゆる局所治療。つまり、頚肩背部および上肢にかけての圧痛や硬結を治療点として選択します。
局所的な治療のポイントとしては、神経学的所見と一致する頚椎レベルの側頚部や頚椎傍部の圧痛著明な部位への刺鍼や、押圧刺激に過敏になっている腕神経叢(ツボでいう缺盆付近)を狙った腕神経叢刺鍼があります。
これらの部位への刺鍼によって再現痛のえられた場合、効果もえられやすいとされています。また、症状の出現することの多い肩背部の圧痛が観察される場所への刺鍼を加えます。
夜間痛があり、安静時痛や頚部の運動障害が強く、強い炎症状態が推測される場合は頚部の安静が第1選択で、鍼灸治療は軽度の刺激量にて対処します。
およそこの時期の症状は数日で収まっては行きますが、激しい炎症をへたこのような神経根症は十分な緩解に到るまでに数カ月かかるものと覚悟していた方がよいように思われます。
刺激量は、その患者の症状や条件(体型・体力・鍼治療の経験の有無など)によって選択し、必要に応じて円皮鍼も併用します。
a. 関連痛型
頸肩背部の疼痛や凝り感、肩甲間部への放散痛に対する治療法。
後頚部・肩上部・肩甲間部の筋緊張および圧痛硬結部への刺鍼。
責任椎間孔位の椎間関節部への刺鍼(障害神経が出る棘突起間の外方約15mm)。
b. 神経根症状型
上肢の疼痛やしびれ感に対する治療法。
障害神経が出る棘突起間直即と、痛みやしびれ等の症状のある部位(上肢のツボ)に鍼を刺入します。
前者にプラスを・後者にマイナスを繋いで、低周波鍼通電により症状のある部位の閾値を上昇させ症状の軽減を図る治療法も行われていますが、私は普通鍼を使用します。
治療例として
c5神経根障害 → c4〜c5棘突起間直即(+) 曲池(−)
c6神経根障害 → c5〜c6棘突起間直即(+) 合谷(−)
c7神経根障害 → c6〜c7棘突起間直即(+) 外関(−)
c8神経根障害 → c7〜t1棘突起間直即(+) 神門(−)
等が行われています。
本症についてのページ参照
頚肩背部の症状が中心で、上肢症状はありません。
解剖学的にも頭部や頚部に岸を持ち、上部胸椎・およそ第6胸椎レベルまでに付着している筋肉が多くあり、この連なりが上背部と頚部に相互関係を持たせている原因の一つになっています。肩こりがひどいときも、似たような症状が現れることがあります。
大まかな改善をうるためには上肢の1穴への雀啄術による遠隔刺鍼が反射的な走効を示す場合もあり、または背部では第3〜第6胸椎棘突起側縁の強い圧痛硬結の見られる点などを1〜2ヶ所程度選定して運動鍼(留置鍼したまま頚をゆっくり動かす)を行うだけでもそのばで運動制限がなくなる場合も少なくありません。
局所的には、疼痛部をはじめとしてその周辺の切皮留置鍼が走効します。
しかし、痛みが強いものや高齢者の寝違え・頻繁に寝違えをくり返しているような患者の場合は、病態も複雑で治療において早期の改善を焦ってはならない場合もあります。
本徴候は、その場で効果が期待できる鍼灸治療の適応症候ですが、病態や病期を間違え1発徴候を期待して刺激量が過ぎると来院時よりも頚の動きをかえって悪くしてしまうこともあるので、発症当日あるいはその翌日の来院の場合は、とくに痛みのため運動制限が強い症例では無理な改善は期待せずにその日の治療を終える勇気も治療者側に必要となります。
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理学的検査 : スパーリングテストやジャクソンテスト・ライトテスト等多数有ります。検者の徒手を用いて行う検査で、痛みの誘発や脈拍の減弱消失が現れれば陽性ですが、陽性率の低さやその信頼性から評価はまちまちです。
気胸 : 肺を包んでいる胸膜といわれる部分に穴があいてしまい、急性の胸痛(胸の痛み)になってしまい呼吸が苦しくなる病気が気胸です。
雀啄術 : すずめがえさをついばむ時のように鍼(はり)を上下動する操作。上下動の幅が大きいほど、また早さが早いほど刺激量は大きいと考えられています。
参考文献 : 医道の日本2000年4&5月号
医道の日本2008年6月号
医道の日本2008年8月号
「頚椎症の鍼治療」講習会資料、etc