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  1.  不定愁訴とは
  2.  肩こり
  3.  機能性便秘
  4.  眼精疲労
  5.  不眠と疲労
  6.  精神的ストレスと筋緊張
  7.  悪血(おけつ)

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肩こりの考え方

 整形外科的な病態生理としては、肩こりの中でもっとも目立つのが僧帽筋のしこりです。ストレスや筋肉の使いすぎによる肩こりは、通常僧帽筋に現れます。
僧帽筋は、下部線維・中部線維・上部線維の3部に分けられます。下部線維と中部線維のトリガーポイントを圧迫すると、背部・肩に関連痛が現れます。上部線維のトリガーポイントを圧迫すると、頭・頚にかけて関連痛が現れます。
また、精神的な緊張が高まったときに肩に力が入ると、これらの筋が持続的に収縮します。その結果、血流障害を伴う筋収縮による発痛物質の蓄積が起こって筋肉痛となります。
一般的には、僧帽筋の筋力が弱い女性の方が肩こりになりやすいといわれます。

 肩こりを感じる直接因子は筋肉内での老廃物蓄積と推測されており、化学的変化によっておきています。その代表的なものとして乳酸・カリウムイオン・ヒスタミン・その他の痛み物質です。
筋肉内外の血流は、筋肉の収縮伸展により促進されます。これを筋肉ポンプと言います。
しかし、持続的な姿勢維持においては筋肉の等張性収縮(収縮・弛緩を繰り返し関節運動を起こす収縮)に匹敵するほどのエネルギーを消費していますがこの場合は等張性収縮と違って筋肉ポンプが有効に作用しません。
人間の場合は、労働やしきたり等の社会生活で不自然で持続的な姿勢維持のための等尺性収縮(関節の運動を起こさない筋収縮)を行わざるを得なくなります。となるとエネルギーも消費し、新陳代謝としての血流が必要です。そして筋肉ポンプが働かない上に且つ筋緊張のために血管を圧迫して血行は悪くなって当然肩こりが起こります。

 筋肉疲労・血行不良の増悪因子としては
1. 前屈みの作業や習慣
2. 同一姿勢の保持・精密作業
3. 精神的ストレス
4. 華奢な体型・筋力虚弱
5. 頚椎の異常・変形

 その他の因子として
1. 寒冷
2. 自律神経失調・更年期障害
3. 貧血・低血圧
等があります。
 肩こりの鍼灸治療に当たっては、全身的な問題としてアプローチすることが非常に大切です。

現代医学から見た肩こりについて

 肩こりは一般的ですが、発生原因は多彩です。そのため局所治療だけでなく、全身の愁訴をよく聞いた上での対処が重要となります。
症候論的には、肩こりによる緊張性頭痛の頻度は高いし、慢性的になるとさまざまな自律神経症状が出現することもままあります。その原因は多岐にわたり、またやっかいなものは心療内科的疾患の重要な症候としても表現されます。
つまり肩こりは、全身的な身体症候なのです。なお、ここでは筋疲労は別物であることを前提としています。

        肩こりの診断と分類・そのメカニズムについて
 肩こりの痛みを感じる部位や圧痛点の好発部位は、各部位の筋腱接合部に一致することは興味ある事実です。また、肩こりの特徴は、この亢進した筋緊張がうまく弛緩できないところに最大の問題点があります。痛みの性質からいえば、こむら返り現象に類似していると考えられます。
では、いかなるメカニズムで骨格筋の異常且つ持続的筋緊張亢進が引き起こされるのか。神経学的には以下のようにレベル診断されます。下記1〜3のレベルは互いに移行関係にあります。

1. 筋肉組織そのものが問題なのか
 このレベルとして想定しやすい典型例として頚肩腕症候群があります。この種の肩こりは、頚肩腕の筋肉を持続的且つ同時に一連の動作を機械的に繰り返し使用するために筋疲労に至るタイプです。

2. 筋肉を支配する末梢神経が問題なのか
 このレベルとして想定しやすいのは、神経根症です。神経根症の急性増悪期を脱すると、肩こりが比較的容易に消失する症例は多いといわれます。このタイプは、頚・頚筋の支配神経根の腫れによる神経根刺激症状の異常筋緊張として考えてよいようです。
ここで加えておかなければならないのは、脊髄分節性あるいは当該支配神経(内臓体壁・筋反射等を含む)で説明可能な疾患(内科疾患 耳鼻科疾患 眼科疾患 歯科疾患等)に関わる肩こりがこのレベルに含まれるということです。

3. その上位の中枢(脊髄・脳)の問題なのか
 このレベルがもっともやっかいなタイプです。この典型的なものに心身医学的なものがあります。この種のものに軽い神経症から重い性心疾患を伴う重度の肩こりがあげられます。
脳がある種の持続的異常放電状態(たとえばストレスなど)にある神経症患者を含む精神医学的疾患の患者は、全身の筋緊張を伴うことがいわれています。このタイプの患者の愁訴としてかなり頑固な肩こりが存在する事実があります。
中枢性メカニズムに関連する特殊なものとして、大脳基底核は、さまざまな動作の連合筋運動のコントロールを司っています。基底核疾患に含まれるパーキンソン病や痙性斜頚は、著明な肩こりを訴える患者が多数存在します。事実、得意な筋硬結がふれる例もあります。

        統合理論として「筋膜腱網システム」について
 筋膜組織に肩こりの要因があることが強く示唆されます。筋膜組織は膠原線維の束になっていて、全身に張り巡らされた筋膜網→メッシュ構造を構成し、これが体全体を覆っています。
筋膜腱網システムは、一つの生体反応システムを構築していると考えられます。筋膜腱網システムは、肩こりの生体の表現の場であると同時に、鍼刺激療法の表現の場でもあります。
この筋膜腱網システムをうまく操るには、鍼の技が重要になります。

肩こり治療としての深層筋(インナーマッスル)に対する治療

 アウターマッスルとは、身体動作の際に働く表層の筋肉であるのに対して、インナーマッスルとは、動作や作業をする際に安定した姿勢を保持し、バランスを保つ役割を担う身体深層部の筋肉(姿勢保持筋)のことです。
アウターマッスルの特徴は、筋肉が比較的大きく、身体全体や関節を動かす際の動的動作で働きます。
インナーマッスルの特徴は、アウターマッスルに包まれるような状態で骨に近い部分に存在し、筋肉が比較的小さく、動的動作時(身体動作)の姿勢制御に加え、静的動作(読書・パソコン・テレビを見る・たち仕事など)の際の姿勢維持の役割も担っています。

 インナーマッスルは、慢性的な肩こり・腰痛の直接・間接的な原因のみならず、猫背などの姿勢不良や眼精疲労・頭痛・不眠・集中力低下などのさまざまな不定愁訴の原因としても注目されています。
また、インナーマッスルは構造上および機能上からも元々血液の循環が悪くなりやすく、疲労が蓄積されて筋緊張の続いた状態になると血液の循環は非常に悪くなり、疲労が回復されにくく筋肉の緊張・疲労が恒常的に持続する悪循環に陥ることが多くなります。
その結果、本来動作筋として働くアウターマッスルが姿勢保持的に働く結果となり、頚→肩→背中→腰などにおよぶ全体的な筋肉の緊張・こりに繋がります。
また、さまざまな状況で常にバランスの偏った姿勢を続けていると、集中して負担のかかる筋肉が偏り、その筋の筋肉疲労から身体全体のバランスを偏らせてさまざまな障害・症状を引き起こします。

 このインナーマッスルは、比較的深い位置にあるため、一般的なマッサージや浅い鍼を方法論とする治療など体表からの刺激では効果は十分ではありません。鍼治療の特徴は、組織を選択して刺激できるところにあります。しかし、深い鍼は気胸のリスクもあるため、施術者としてはジレンマがあります。安全な治療は、何にも増して重要だと思います。

現代医学からみた肩こりの鍼治療

1. 鍼治療の目的
 肩こりの病態の特徴は、こり感に一致した局所的な筋緊張を伴っていることです。筋緊張があれば当然緊張した筋肉組織の中を通る血管および神経は圧迫されることになり、筋緊張が鍼で緩和できれば圧迫されている血管や神経も正常状態に戻ります。
そのためには、筋緊張部を正確に触診で把握し、鍼で筋緊張を緩和する技術が必要となります。
痛みに過敏な部位は皮膚表面、内部では外筋周膜(筋膜)です。いかにこの部位で鍼を通過させるかで筋肉の緊張が変化します。
 鍼による過剰刺激を防止するには、鍼治療により筋緊張が変化したことを施術者が的確に1本の鍼を介して感覚できなければなりません。無理に鍼を進めるのではなく、表面から徐々に筋の緊張を取り除くという心構えで鍼を行います。

2. 肩こりの治療法
A. 頚部のこり
 頚部のこりが出現しやすい部位は、つぼでいう 天柱 風池 完骨を結んだ横のラインと
第2頚椎の高さで頭板状筋部と第6頚椎の高さで頚板状筋部を結んだ縦のラインです。
以上縦横2ラインでの頚部の筋緊張を緩和する方法は、切皮後5〜7MMの部分(皮膚と外筋周膜の間)で小さな鍼の上下動(雀啄術 振幅1〜2MMで1秒間に1,2回)を行うと、深部の筋緊張がとれ安くなります。
また、置鍼時にこっている筋内まで鍼を刺入せずに外筋周膜で鍼先を止め置鍼する事により、筋緊張の緩和を10〜15分後に獲ることができます。
頚部での鍼治療は、刺激が過剰にならないようとくに注意します。こりが取れないから過剰刺激を行うと、頚部では治療後おもだるさあるいはこり感が酷くなる場合が多くあります。しかし、刺激に対する感受性は個人差が大きく、教科書どおりには行きません。

B. 肩胛骨上部のこり
 肩胛骨上部のこりは、つぼでいうと、肩井 肩中兪 肩外兪 曲垣などに出現しやすいとされています。肩中兪は僧帽筋の下部に肩甲挙筋が走行しているので、肩甲挙筋の緊張に伴いこりが出現しやすいといわれます。
肩甲挙筋 頚板状筋 斜角筋などの筋緊張を緩和する方法として、第6頚椎(C6)の高さで頚板状筋部と肩外兪を結んだ低周波鍼通電を行う治療者もおられます。
肩胛骨上部のこりは、肺尖の関係があり、深刺を避けます。

C. 肩甲間部のこり
 肩甲間部のつぼの反応部位は、肺兪 心兪に多いが、とくに膏肓穴付近にこりが出現しやすいとされています。膏肓への刺鍼は、斜刺で行い、肩胛骨前面と肋骨の間に沿った方向で刺入します。深部には肺が有るため、鍼の方向・深度には細心の注意が必要となります。
天宗も肩こりで圧痛が出現しやすいつぼです。肩胛骨背面に位置するため、気胸のおそれはありません。


参考文献 : 「肩こりの基礎と鍼主義療法の実際」講習会資料
       医道の日本2006年2月号
       医道の日本1994年4月号 etc


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