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腰部脊柱管狭窄症は、加齢に基づく退行性変化によって骨性因子・椎間板因子・靭帯因子等によって脊柱管が狭窄し、その中に存在する馬尾神経が圧迫されて下肢に障害を来す疾患です。
間欠跛行(かんけつはこう)は脊柱管の狭窄によって馬尾神経が圧迫され、阻血状態になっているところに歩行という下肢筋の活動に呼応して要求される支配神経の酸素消費の増大が生じ、さらなる酸素要求に対応できなくなり発症すると考えられています。
主に下肢症状が歩行により発生あるいは増悪し、短い休息で回復する場合を神経性間欠跛行と呼び、脊柱管狭窄症に典型的とされます。
神経性間欠跛行は、安静時には症状はないが歩行や立位により痛みやしびれ感・脱力感が生じて歩行障害が出現し、前屈の姿勢(休息)にて症状が消失軽減するもので、また安静時に何らかの症状所見が存在する場合は範囲の拡大など症状の程度が強くなるものと定義されています。
他覚所見では、椎間板ヘルニアでは前屈が制限されるのに対し、狭窄症では前屈より後屈が制限されます。
臨床所見による機能的分類では、脊柱管狭窄症による神経性間欠跛行は、下肢痛を主体とした単根性障害の神経根型、下肢会陰部のしびれ感等異常感覚を主症状として多根性障害を呈する馬尾型、および両者の合併した混合型に分類できます。
神経根型は保存療法の適応ですが、馬尾型は保存療法では効果をみることは少なく鑑別は非常に重要です。
間欠跛行(かんけつはこう)は、神経性・血管性・脊髄性の三つのタイプに大別され、そのうち、腰部脊柱管狭窄症にみられる間欠跛行は神経性です。
一方、血管性間欠跛行の代表的な疾患としては、閉塞性動脈硬化症(aso)があります。
閉塞性動脈硬化症(aso)では、l5神経根型の狭窄症と同様の腓腹部痛(阻血痛)による間欠跛行を生じることが多くあり、足背動脈などの下肢動脈の拍動の触知が可能か否かを確かめる必要があります。
臨床症状が類似していることなどから鑑別が重要となり、足背動脈の触知,自転車テストおよび前傾姿勢での症状消失などが、神経性間欠跛行の鑑別に有用です。
有用かつ簡便な鑑別法は足背動脈の触知で、ASOであれば脈は触れにくいです。
脊柱管狭窄には前屈すると症状が楽になり、逆に後屈すると症状が悪化するという姿勢性の因子が在るので、自転車は前傾姿勢でこぐので脊柱管狭窄患者であれば、脊柱管が広がることで血流が増加し、こぎ続けることができます。
一方ASO患者では、姿勢に関係なく筋肉内の虚血により足が痛くなります。
また、これらの方法に加えて、脊柱管狭窄の患者は腰痛を伴っていることが多いので、これも鑑別の一助となります。
多くの患者の症状は腰椎後屈時(洗濯物を干す動作など)や立位の持続時(電車通勤時や台所仕事時など)、背筋を伸ばした歩行時において誘発されやすくなります。
一方、腰椎前屈時(リラックスしていすに座っている時や横向きで寝ている時、自転車走行時や押し車使用の歩行時)では軽快し、無症状であることも少なくありません。
腰椎の後屈やケンプ徴候などの動作により、後方の要素が脊柱管を狭くします。従って、前屈姿勢は後方からの要素による圧迫が解除され、症状が軽減します。前屈の姿勢で症状が消失するのはこのためです。
ただし神経の圧迫だけでは症状の出現はなく、神経の圧迫に神経内の血流障害が加わることで症状が発症すると考えられています。
神経根型の自覚症状は単根性の神経領域の下肢痛が多く、しびれ感などの異常感覚は単独では少なく、片側性が両側性より多いとされます。
それに対して馬尾型は、下肢や臀部のひりひり・じんじん・ちくちくなどの異常感覚や下肢の脱力感を呈するもので、神経根型のような疼痛は訴えません。症状は両側性で、多根性が多いとされます。
馬尾型の見きわめには、自覚症状の聴取を主とする問診が最も重要です。
馬尾症状の進行例では、両側の脚にしびれ(特に足底にあり、患者はいつも砂利をふんでいる感じなどと表現する)が安静時にも出現するようになりますが、左右の脚に同程度の症状がある場合には、糖尿病性などの末梢神経障害を含めた他要因の関与も考慮する必要があります。
速やかに専門医への受診を進めるべき症例としては
1. 重度の馬尾症状が明らかな患者
会陰部灼熱感、歩行・立位に伴う尿(便)漏れ感、持続性勃起など。
2. 非可逆性とされる足底を主とする安静時しびれが出現あるいは存在した場合
3. 高度および進行性の筋力低下を認める場合
筋力低下の判断は、片脚規律および数回の膝屈伸が可能かどうか、かかと歩きが可能かどうか、つま先立ちおよび歩行が可能か否かで概ね判断できるとされています。
画像上の神経圧迫所見が存在しても無症状の症例も存在し、また同一症例でも有症状期と無症状期があることや、自然経過でも自覚症状の軽減例があることは重要な事実です。
従って、無症候性の神経圧迫状態にすることが保存療法の目標となります。
自覚症状や他覚所見より判断した狭窄部周囲である椎間関節部の刺鍼と、傷害されている末梢神経の神経刺激を行います。歩行や立位によって起こる自覚症状や他覚所見にて、障害神経レベルを推定します。
患者の体位は側臥位で背中を少し丸めることで、脊柱の棘突起や椎間関節などを触診しやすい状態にします。
鍼灸治療の場合、椎間関節部を正確に刺激していると断言できませんが、椎間関節付近への刺鍼方法は2パターンあり、疼痛部位への響き感がポイントとなります。
刺入時の響き感(関連痛)は患者の愁訴と一致する部位であれば直後より症状が軽減することもありますが、疼痛部位への響き感が得られないときは、効果が期待できません。
刺入法法は、棘突起の下端より外方に約2cmまたは2横指外側が椎間関節部の中央に当たる点とし直刺します。
もう一つの刺入法は、棘突起の下端より外方に約6〜7cm外側で、中心部に向かい45度の角度で深刺します。
末梢神経刺激波、自覚症状がある下肢の神経支配領域の経穴(ツボ)に留置鍼します。
具体的には、下腿の前側部である前脛骨筋周辺の脛(すね)から足先にかけての痛みやしびれ感は深腓骨神経領域の経穴である足三里に留置鍼します。
狭窄症はl5 s1神経根障害が多く、浅腓骨神経領域の下腿外側から足先(小指側)に沿った痛みやしびれを訴える患者が多く、浅腓骨神経刺激波腓骨頭の下の陽陵泉を刺入ポイントとします。
下腿後側(ふくらはぎ)から足底の痛みは委中・承山から脛骨神経領域に刺激を与えます。
委中は膝関節屈曲によってできる横線のほぼ中心で、膝窩動脈の内側の圧痛点を狙います。2〜3cm刺入すると、足底部に響き感が得られます。この鍼刺激は痛みの閾値を変化させ、神経の血流を改善する効果があります。
一般的には、馬尾性間欠跛行は保存療法が無効であるといわれています。難治である上、治療部位的にも技術的にも難しい疾患です。
陰部神経に、鍼通電刺激を行う施術者もおられます。
馬尾型の鍼灸治療の考え方としては、本症の本体は、神経組織の虚血や鬱血などの循環障害であると考えられています。
神経根型と馬尾型の合併した混合型などでは、神経根型が関与する痛みには効果があるため、鍼灸治療も保存療法として試みる価値はあると思われます。
まず背臥位にてトーマステストを行い、股関節屈曲拘縮・股関節外転角度を確認し、腰椎の前弯増強や股関節の屈曲拘縮の改善を目的としたアプローチを行います。
背臥位にて膝窩に枕やタオルを入れ、膝関節軽度屈曲位に保ち、触診にて腸骨筋・大腰筋・長内転筋の硬結部に当たる鼠径部周辺のツボの衝門・箕門などに寸6 2番鍼にて約3cm刺入して15〜20分留置鍼します。
しかし、初診の患者や女性の患者に対しては、いきなり行うことは控えます。
そして神経根型と同様に、多裂筋や椎間関節刺鍼、下肢後側の刺鍼も行います。
治療頻度は週1回で、10回・約3ヶ月ほど行います。
<キーワード>
トーマステスト : 股関節屈筋拘縮の有無を目的としたテスト
背臥位で大腿を体幹に近づけるように股関節を屈曲した際に、他方の伸ばしたままの下肢がベッドから浮き上がった時に陽性とする。
参考文献 : 医道の日本2003年4月号
医道の日本2008年1月号
医道の日本2009年11月号